テッペーザの作用機序

テッペーザ®の作用機序

こちらではテッペーザ®の作用機序動画をご覧いただけます。

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テッペーザ®(テプロツムマブ)の作用機序
監修:隈病院 院長 赤水 尚史 先生
再生時間 04:46

甲状腺眼症は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症) に伴って発症することが多い希少疾患です。主に甲状腺疾患をもつ人に起こり、多彩な眼症候を呈します。本動画では、甲状腺眼症の発症機序とその治療について、ご紹介します。

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甲状腺眼症は、バセドウ病眼症とも呼ばれますが、バセドウ病とは別の疾患です。

最近の研究から、甲状腺眼症はバセドウ病とは異なる特有の機序によっても引き起こされると考えられるようになってきました。

そのため、バセドウ病を治療しても、甲状腺眼症の臨床症状は改善しないことがあります。

バセドウ病では、甲状腺刺激ホルモン受容体(以下、TSH受容体)を標的とする自己抗体が、甲状腺機能の亢進を引き起こします。

一方、甲状腺眼症は、眼窩組織に起こる自己免疫性炎症性疾患であり、多彩な眼症候を呈します。最重症例 では視力が脅かされる可能性もあります。

甲状腺眼症の発症機序と臨床症状について、詳しく見ていきましょう。甲状腺眼症では、眼の奥の眼窩線維芽細胞においてTSH受容体の活性化により、病態の中心的役割を担う分子の一つであるインスリン様成長因子-1受容体(以下、IGF-1受容体)とその自己抗体が、β-アレスチンを介してTSH受容体と機能的シグナル伝達複合体を形成し、活性化します。これにより、眼窩線維芽細胞が刺激されます。

眼窩線維芽細胞では、甲状腺眼症の活動期から慢性期にわたり、TSH受容体とIGF-1受容体が過剰発現していると考えられています。

眼窩線維芽細胞が活性化されると、重度の炎症、外眼筋の肥大や繊維化、眼窩脂肪組織の肥大を引き起こす可能性があります。その結果、眼球突出、複視、眼瞼後退といった甲状腺眼症に特徴的な症状があらわれ、視機能の低下につながることもあります。

また、主な症状として、眼瞼腫脹・紅斑、結膜の発赤・浮腫、涙丘と半月ひだの炎症などがあらわれます。

テッペーザ®は、世界初の甲状腺眼症を適応とした治療薬です。

テッペーザ®は、IGF-1受容体に結合して、IGF-1受容体/TSH受容体シグナル伝達複合体を介する眼窩線維芽細胞の活性化を阻害する、新規作用機序の薬剤です。

眼窩線維芽細胞表面のIGF-1受容体が阻害されることにより、ヒアルロン酸産生、脂肪細胞の増生、外眼筋肥大、炎症性サイトカイン産生など、シグナル伝達の下流で起こる現象が抑制されると考えられます。

テッペーザ®はIGF‐1受容体を阻害 することにより、甲状腺眼症の炎症症状や眼球突出を改善することが臨床試験で示されています。

甲状腺眼症とテッペーザ®の作用機序についてご理解いただけましたでしょうか。甲状腺眼症の診療の一助としていただけたら、幸いです。

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インスリン様成長因子-1受容体(IFG-1R)とは

IGF-1Rは、インスリン受容体(IR)と全アミノ酸配列で約50~60%の相同性を有するチロシンキナーゼ共役型細胞表面受容体型です。IGF-1Rは、リガンドであるIGF-1およびIGF-2によって活性化され、細胞増殖、分化、炎症などの重要な細胞活動を調節します。

TEDの病理学

甲状腺眼症の病態生理には、IGF-1R及び甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)の関与が報告されています。眼窩線維芽細胞において、両受容体は共局在し、過剰に活性化していることが示されています。 眼窩線維芽細胞のIGF-1RとTSHRがβ-アレスチンを介して複合体を形成し、シグナル伝達が活性化されると、筋線維芽細胞や眼窩脂肪細胞への分化促進、炎症性サイトカイン過剰産生に伴う眼窩組織の炎症・肥大化、ヒアルロン酸などのGAG過剰産生に伴う外眼筋の線維化などが引き起こされます。

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Ugradar S, et al.: Eye (Lond). 2022; 36(8): 1553-1559より作図

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眼窩線維芽細胞におけるTSHRおよびIGF-1Rシグナル伝達経路の概略図
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テッペーザ®の作用機序

テッペーザ®(テプロツムマブ)は、ヒト型IGF-1Rモノクローナル抗体であり、IGF-1Rの下流の細胞内シグナル伝達を阻害します。

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